着床前遺伝学的検査(PGT)

体外受精や顕微授精によって得られた胚を子宮に戻す前に、染色体の数の異常があるかを診断して、異常がないと判断された胚を移植する方法です。それにより移植あたりの妊娠率の上昇と流産率の低下が期待できます。欧米では流産を防ぐ目的で、すでに実施されており、2016年から2022年まで日本産科婦人科学会の主導による臨床研究<着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究>が学会の承認を受けた施設で開始され、当院も本臨床研究に参加しました。

PGTとは

十分に発育した受精卵(胚盤胞)から一部の細胞を取り出し、必要な検査を行う技術を着床前遺伝学的検査(PGT)と呼んでいます。このうち、胚の染色体の数的異常の有無を検出する技術を着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)、着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)と呼びます。

対象となる方

下記のいずれかに当てはまる患者様で、かつ婚姻関係にあり、もしくは婚姻関係ではないがパートナーが治療の結果、出生した子について認知を行う意向がある方を対象としています。

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、体外受精・胚移植を行っても着床せず、また流産してしまう状態が2回以上続いた方や流産の経験が2回以上ある方

PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)は、男女のどちらかに染色体の構造異常があり、それが不育症の原因となっている、もしくはそれが原因となって今後、流産をしてしまう可能性のある方

必ず事前に、日本産科婦人科学会作成のPGTに関する動画をご覧いただき、チェックシートに全てチェックが入れられることと同意書の提出がPGTを行う条件となります。
動画、チェックシートに関しては日本産科婦人科学会をクリックしてください。

ご不明点がある場合は、@linkアプリ・Webから金曜日の近藤医師(臨床遺伝専門医)の遺伝カウンセリングの予約を取り、ご質問ください。

・遺伝カウンセリング
  予約日時: 金曜日 12:00、16:00、18:00 20分程
  費用 : 3,300円(税込)

キャンセルは前日23:59まで可能です。それ以降のキャンセルにつきましてはご連絡の有無にかかわらず、キャンセル料(税込3,300円)を請求させていただきます。

PGTの流れと治療費用

大きく分けて二つの流れがあります。
1 新たに採卵を実施し胚盤胞まで到達した胚にPGTを行う。
2 既に凍結している胚を融解しPGTを行う。
基本的には、1の新たに採卵を実施し、PGTを実施することとなります。ただし採卵を行っても胚盤胞が得られる可能性が低い場合のみ、2の既存の凍結胚を融解しPGTを行うことが可能です。どちらの適応となるのかは担当医とご相談下さい。1、2とも必ず事前に、日本産科婦人科学会作成のPGTに関する動画をご覧いただき、チェックシートに全てチェックが入れられることと同意書の提出がPGTを行う 条件となります。動画、チェックシートに関してはこちらをクリックしてください。

採卵~PGT~結果が出るまで

  1. 月経3日以内に受診していただき、その方に合わせた方法で採卵を行います。事前に動画視聴お済ませください。チェックシートと同意書の提出をお願いします。採卵のスケジュールや方法は、PGTを行わない採卵と同じですが全て自費診療となります。
  2. 胚盤胞に到達し、PGT実施可能な胚に対して生検(細胞の採取)を行います。実施後胚は凍結し、採取した細胞は外部検査機関で検査を行います。
  3. 結果は3週間ほどででます。結果が出た旨メール連絡いたしますので、金曜日の近藤医師の外来を受診していただき、結果説明を受けてください。
  4. 治療費用(税込)
    体外受精治療は現在保険適用となってはいますが、現時点(2022年9月1日時点)でPGT-Aが自費治療となるため、混合診療ができない理由から体外受精胚移植までの治療費用含めてすべて自費治療となります。
採卵 30~50万円程 (採卵の内容により異なります)
凍結 57,200円 2本目以降11,440円/1本追加
PGT-A 胚1個につき88,000円

例: マイルド法で採卵。4個胚盤胞にて凍結およびPGT-A実施の場合
採卵代約35万円 + 凍結代 約9万円 + PGT-A 約35万円 =約79万円
移植できる胚があった場合、別途移植代(約20万前後)かかります。

凍結胚融解~PGT-A~結果が出るまで

凍結胚を融解しPGT-A実施希望がある場合、一度受診をしていただき、その旨をお伝え下さい。(2022年4月以降に保険診療で凍結した胚については対象外となります。)複数個凍結胚がある方は、何個の胚に対してPGT-Aを行うか、予めご夫婦で決めておいて下さい。

  1. 事前に動画視聴お済ませください。チェックシートと同意書の提出をお願いします。
  2. 検査依頼の1週間以内に胚を融解し、PGT-A可能な胚に対して生検を行います。実施後胚は再凍結し、採取した細胞は外部検査機関にて検査を行います。
  3. 結果は3週間ほどででます。結果が出たらご連絡いたしますので、金曜日の近藤医師の外来を受診してください。
  4. 治療費用(税込)

    融解 および 再凍結 融解個数5個まで57,200円
    融解個数が6個以上の時は上記金額に加えて5個ごとに22,880円
    凍結保存 移植可能胚があった場合、1年間の凍結保存代が1本につき11,440円
    PGT-A 胚1個につき88,000円
    例: ・凍結している胚を2個融解し、2個PGT-A実施。移植可能胚がなかった場合 融解・再凍結代 57,200円+PGT-A 176,000円=233,200円
      ・凍結してある胚を7個融解し、5個PGT-A実施。移植可能胚が2個あった場合 融解・再凍結代 80,080円+PGT-A 440,000円+凍結保存代 22,880円=542,960円 移植の際は別途移植代(約20万円)がかかります。

注意点

  • 胚を融解してPGT-Aができないことがあります。検査可能な胚のみに実施し、検査できなかった胚については破棄となります。
  • 胚生検時の細胞採取の胚の損傷の影響に加えて、融解・再凍結による胚のダメージによる、妊娠率低下の可能性があります(5%くらい)。
  • スケジュールおよびコストにつきましては治療内容により、大きく変わる場合もございます。

PGT結果の開示

PGT解析結果、移植に適するか否かの判定結果以外の情報は、患者様ご本人、ご家族、及びうまれてくるお子さんに開示しません。加えて、ご本人および家族らの開示請求があった場合にも開示されないことをご了承ください。

PGTに関するカウンセリング

PGT結果の開示の時には、PGTに必要な臨床遺伝の知識を持った生殖専門医と臨床遺伝専門医がカウンセリングを行います。充分なカウンセリングを受けた上で実施を決定してください。事前あるいは治療途中でも希望がありましたらさらに遺伝カウンセリングを受けることができます。

個人情報の保護

治療結果が学術目的のために臨床研究担当医師等が学会発表や学術雑誌上に公表することがありますが、個人情報の秘密は匿名化され厳重に守られ、第3者には絶対にわからないように配慮されます。治療・経過結果の登録などで当院職員が記録を確認することがある場合でも、これらの担当者には守秘義務(記録内容を外部に漏らさないこと)が課せられています。

日本産婦人科学会へ治療結果の報告

日本産科婦人科学会ではPGTおよび体外受精治療結果に関するデータ集積を行っています。PGTを行った患者様に関して、日本産科婦人科学会へ治療経過などの報告を行います。報告の際には、患者様の個人情報は保護されます。